「マイ遺品セレクション」みうらじゅん著
著者によると「マイ遺品」とは、「死ぬまで捨てるもんか!」と強い意志を持って収集し続けているモノのことだそうだ。
ニッチなジャンルで静かなブームを次々と巻き起こしてきた著者は、幼いころに始まった「収集癖と発表癖」が現在まで続き、いまや収集品は倉庫を借りなければならないほど膨れ上がっているという。他人には「なぁーんの価値もない」それらのコレクションを、後世のために、自らがキュレーターとなって、その魅力や楽しさを解説した、紙上マイブーム博物館。
例えば、昭和40年代に興隆を極めた「ゴムヘビ」。小学生時代に学校で好意を寄せていた女子の机の上に置いては、その驚くさまを見て喜んでいたが、いまや「絶滅危惧種」となってしまった。
10年ほど前に誰に依頼されることもなく救済に立ち上がった著者は、あるときは海外にまで買い付けに行き、現在、形状が異なる103匹を捕獲し、保管しているという。
その他にも、冬場、旅行代理店の店頭のスタンドを真っ赤に染める「カニを食べに行くツアーのパンフレット」、名付けて「カニパン」や、「どうせ落とされるなら少しは予習ぐらいしていった方がいいんじゃないか」と思い立ち、現世で手に入るものを集め始めた「地獄グッズ」、名所があまりない土地に発生しがちなカスみたいな風景の絵はがき「カスハガ」、観光地のつぶれそうな土産物屋の片隅にひっそりとその身を隠している「ヌートラ(ヌードトランプ)」など。膨大なコレクションから56品目を紹介。
それらのモノに対する著者の思いを語った文章を読んでいると、なんだか、とてもステキなものに見えてくるから不思議だ。
この中から、著者が名付け親の「ゆるキャラ」に続く、新たなブームが湧き起こるかも。
(文藝春秋 1300円+税)