女たちの2019
「禁断の果実」リーヴ・ストロームクヴィスト著 相川千尋訳
「ミー・トゥー」運動に沸いた昨年。今年も輝く女たち。
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北欧パンクムーブメントの流れをくむ「フェミニズム・ギャグコミック」。スウェーデンでは90年代の終わりまでマンガ界は男支配。著者はそこに風刺で切り込んだわけだ。著者が取り上げるのは男たちのとんでもない偏見の歴史である。
たとえばコーンフレークで知られるジョン・ハーベイ・ケロッグは女のオナニー禁止に情熱を傾け(?)た。理由は「子宮がんや精神錯乱を引き起こすから」。また英国人医師I・ベイカー・ブラウンのクリトリス切除運動も「過度な興奮」を静めるとして多くの男の支持を集めた。16世紀にはクリトリスが「女のペニス」と言われて邪悪視されたが、18世紀になると女には性欲がないから道徳的に高潔だと逆に祭り上げられた。ヘタウマ調の絵がたくまざるユーモアを醸し出している。
(花伝社 1800円+税)
「私たちにはことばが必要だ」イ・ミンギョン著 すんみ、小山内園子訳
2016年5月、韓国ソウルきっての繁華街カンナムで殺人事件が起こった。女子トイレに忍び込んだ男が無作為に女性を殺害。逮捕されると「女なら誰でもよかった」と告白したのだ。
これに立ち上がった韓国のフェミニストたちのドキュメント。典型的な女性嫌悪(ミソジニー)事件とし、単なる変態殺人として片付けようとする世間に挑戦した。韓国警察の幹部は「女性嫌悪殺人」という呼び名を不適切としたが、世間は女性たちを支持。著者は韓国で通訳をしながら大学院に通うフェミニスト運動家だ。
(タバブックス 1700円+税)
「むずかしい女たち」ロクサーヌ・ゲイ著 小澤英実、上田麻由子訳
DV、レイプ、望まない妊娠や流産……男たちの身勝手にふりまわされたトラウマを抱えた「むずかしい」女たちを描く短編集。
男たちは性欲任せに女たちを抱き、その気持ちには注意も払わない。カトリックの神父は少女を犯し、父親は幼い娘を連れて週末ごとに愛人に会いに行く。
しかし全21編のすべてが“被害者としての女”を描くわけではない。「私はナイフ」のむせ返るような血と性はまるでヘミングウェーばりの文体で狩猟と性と男女の交媾(こうこう)を描く。両親がハイチ出身のアメリカ人女性作家の多彩な文体を堪能できる一冊。
(河出書房新社 2400円+税)