「ルポ プーチンの戦争」真野森作著
2014年3月16日、ウクライナ領のクリミアで住民投票が行われ、ロシアへの編入賛成が9割超と発表された。それを受けて、ロシア大統領のプーチンはクリミアのロシア編入を宣言。さらに、親ロシア派勢力が多数を占めるウクライナ東部のドネツク、ルガンスク両州が独立を宣言し、これに対してウクライナ政府はドネツク州へ派兵し本格的な戦闘状態に入る。いわゆる「ウクライナ危機」の始まりだが、新聞記事などを読んでもその輪郭がうまくつかめない。
2013年10月~17年3月まで毎日新聞社のモスクワ特派員として現地を取材してきた著者によれば、このウクライナをめぐる戦争は、国の正規軍同士が正面からぶつかる戦争ではなく、扇動工作とプロパガンダ、特殊部隊や民兵の導入、住民投票といった政治的動員など多様な手段を組み合わせた「ハイブリッド戦争」であり、すべてがあいまいなのが特徴だという。
著者は、ドネツクの親ロシア派幹部、ドネツク市長、クリミア共和国副首相、ウクライナ政府軍の脱走兵等々、多方面から生の声を引き出し、このわかりにくい戦争の真の姿に迫っている。
(筑摩書房 1800円+税)