「MOONSHOTS」ピアーズ・ビゾニー著 佐藤 健寿監修
ちょうど50年前の夏、2人の宇宙飛行士が人類史上初めて、地球以外の天体に降り立った。アポロ11号のアームストロング船長と、オルドリン宇宙飛行士による月面着陸だ。アームストロング船長の「これは一人の人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては偉大な飛躍である」との言葉通り、それから半世紀、いまや土星や火星などに探査機が送られ、民間人の宇宙旅行まで現実化されつつある。
本書は、NASA(アメリカ航空宇宙局)が蓄積する記録写真で、その壮大な人類の宇宙探査の歴史を振り返る写真集。
NASAは、アメリカ初の有人宇宙飛行を目指したマーキュリー計画当初、宇宙飛行士がカメラを使用することを想定していなかった。初期設計では構造的に弱くなるから窓をつけない提案さえあったという。また、宇宙からの撮影は他国からスパイ行為とみなされるのではないかと神経をとがらせていたのだ。
しかし、1962年、地球周回軌道を飛んだ宇宙飛行士のウォルター・シラーが自分で購入したスウェーデン製のカメラ・ハッセルブラッドで撮影したことで、ミッションを撮影して記録に残すことに価値があることが実証された。
マーキュリー計画に続くジェミニ計画時代、ジェミニ4号で行われた1965年のアメリカ初の宇宙遊泳や、ジェミニ6号と7号による史上初の宇宙でのランデブーを、それぞれの船内から撮影した写真は、もちろん宇宙船そのものは前時代的に見えるが、その解像度はとても50年以上も前の映像とは思えないほど鮮明だ。
そして、「10年以内に人間を月に着陸させて、安全に帰還させる」ことを公約した1961年のケネディ大統領の演説によって、いよいよアポロ計画が動きだす。
アポロ9号は月面着陸の試験のため地球を周回飛行。その際の司令船から撮影された月着陸船や、宇宙服の試験のために司令船のハッチを開けて宇宙飛行士が出てくるショットなど、まるで映画を見ているかのようだ。
もちろん、11号のミッションには特に多くのページが割かれる。アームストロング船長が月面を歩いた最初の人であるが、11号の有名な写真は、ともに月面に降り立ったオルドリン宇宙飛行士をアームストロング船長が撮影したものがほとんど。あの有名な足跡も同飛行士のものだ。月面でのミッションを終えて着陸船に戻り、安堵の表情を浮かべる船長のスナップなどもある。
着陸船の帰りを待つ銀色に輝く司令船や、地球と着陸船と月とのコラボレーションなど、ミッションの一部始終を写真でたどる。
解説のテキストも充実しており、着陸船が月に降り立つ直前にトラブルが起きた際の地上の管制官と飛行士との緊迫したやりとりなど、結果は分かっているのにドキドキしてしまうほどだ。
その後のスペースシャトルから現在も運用中の国際宇宙ステーションまで、人類の宇宙への挑戦を、貴重な写真で一望できる見応え、読み応えのある豪華本。
(玄光社 4200円+税)