「死にがいを求めて生きているの」朝井リョウ著
看護師の白井友里子は、大事な友人が引っ越してしまうので不登校に陥っていた弟の翔太を元気づけようとしていた。そこで植物状態のまま病院に眠る南水智也を献身的に見守る堀北雄介に弟を会わせることを思いつく。智也が目が覚める瞬間に絶対に立ち会いたい、そう信じて毎日来ているんだと翔太に言い聞かせる雄介――。
ここから一転、物語は智也と雄介の小学生時代へ遡る。何事においても目立ちたがり屋で、人と競うのを至上の喜びとする雄介。控えめで、雄介の暴走を抑える役目の智也。まるで両極のようなこの2人がなぜ友人でいるのか? その後も、中学、高校、大学と、2人をよく知る人たちの視点から、智也と雄介の間に横たわる歪な関係が語られていく。
そこで浮かび上がってくるのは、古代以来、世界は海族と山族という2つのグループの対立の歴史によってつくられており、それぞれ独自の身体的特徴を有し、平成の現代でも双方の血を継ぐ家系が存在しているという「海山伝説」である。伊坂幸太郎、澤田瞳子ら8組9人の作家による原始から未来を舞台にした壮大な競作「螺旋プロジェクト」の第1弾、平成編。
(中央公論新社 1600円+税)