「府中 三億円事件を計画・実行したのは私です。」白田著
1968年12月に府中で起きた3億円事件。偽の白バイ隊員によって現金輸送車ごと奪われるという大胆な手口が話題をさらった。本書は、この事件の犯人を名乗る「白田」によって書かれた手記的小説。事件発生から50年を迎えた昨年、小説投稿サイト「小説家になろう」に投稿され、果たしてこれは小説なのか、それとも犯人の告白なのかとネット界を騒然とさせた。
ストーリーは、現在どこにでもいる老人のひとりとして穏やかな日々を送っている著者が、長年連れ添った妻が事故で亡くなったことをきっかけに過去に犯した罪を告白しようと決意するところから始まる。妻の葬儀後、3億円事件の犯人は自分であることを息子に告白した著者は、息子に促されて事件の真相を世に公表することを決心し、誰にも脚色されずに公表する手段として小説サイトに投稿することにしたというのだ。
なぜこの事件を起こしたのか。なぜ捕まることなく時効を迎えられたのか。その後の人生はどうなったのかを告白の形でつづっている。青春時代の出来事が積み重ねられ、事件発生へとつながっていく展開に引き込まれる。
(ポプラ社 1000円+税)