サブカルの昭和・平成史

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「革命とサブカル」安彦良和著

 ついに決まった新元号。これでいよいよ平成も遠くなる……。

「機動戦士ガンダム」のキャラクターデザインで一世を風靡した著者。もとは団塊世代の「(昭和)22年組」で、弘前大時代に学生運動で除籍。以後、虫プロの養成所からプロのアニメーターになり、いつしか空前のサブカルブームの中で大御所となっていた。本書はその人がいま原点に戻って、弘大時代の全共闘仲間や「敵」の元民青メンバー、またアニメ研究家らと対話した記録。

 後半は68年以後現在までの革命、サブカル、日米関係、ナショナリズム等についての著者の論考を収録する。「よど号」の年、著者は虫プロに入社。その後担当した「ガンダム」は原作・監督の富野由悠季によって、巨大ロボの戦闘ものから「戦争」を描く一線を越える。さらに「エヴァンゲリオン」の庵野秀明らがこれに続く。だが、著者は「エヴァ」が先鞭をつけた「世界系」と呼ばれる流行には強い違和感を示す。

 革命世代とサブカル世代の間にある深い溝が一瞬垣間見えるようだ。 (言視舎 2200円+税)

「『プロレス』という文化」岡村正史著

 いまから30年近く前、立花隆はプロレスを「品性と知性と感性が同時に低レベルにある人だけが熱中できる低劣なゲーム」と唾棄した。著者は高校教諭のかたわら関西で「プロレス文化研究会」を主宰。「品性も知性も感性も動員したプロレス的思考」はできないのかと自問してきたという。その成果が本書。

 プロレスという「見せ物」の存在論、哲学者R・バルトが魅せられたフランスのプロレス、力道山の人気とスポーツ紙やプロレス雑誌の隆盛と話題は尽きない。しかしそのプロレス人気もいまや下火。01年以降は異種格闘技に押されている。平成も既に遠いのである。 (ミネルヴァ書房 3500円+税)

「ウルトラマンと戦後サブカルチャーの風景」福嶋亮大著

 81年生まれで東アジア近世史からポストモダンまで論じる文芸評論家。ウルトラマン以前の「月光仮面」時代にまでさかのぼり、日本の戦後史とサブカルの関わりを論じる。

 ウルトラシリーズから「宇宙戦艦ヤマト」「ガンダム」、そして宮崎アニメまで、サブカルは敗戦国ニッポンが想像上で「やり直し」するために利用されたという。司馬遼太郎が戦前の日本軍の貧弱な装備を指して日本は「軍国主義国家」などではなかったとしたことを踏まえ、著者は、戦後のサブカルの中に「軍国主義」の「やり直し」が見られると指摘している。 (PLANETS 2800円+税)

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