「東京夜景」堀寿伸著
東京スカイツリーの地上350メートルの「天望デッキ」や地上450メートルの「天望回廊」からの眺めは、東京どころか関東平野一円を眼下に収める大パノラマ。夜ともなると、その眺めは歓楽街の瞬くネオンや、行き交う車のライト、街灯、ファッションビルや高層ビル、そして人々が暮らす部屋の窓からこぼれる明かりなど、さまざまな光が混然となり、世界一の夜景となる。
昼間は雑然とした風景も、夜の闇に欠点が隠され、ひときわ美しくなる。本書は、そんな東京の夜景スポットを集めたビジュアルガイドブック。
2012年の完成と同時に新たな観光名所にもなったスカイツリーは、夜は美しくライトアップされ、東京の夜景に欠かせない存在でもある。ということで、川面に映る「逆さスカイツリー」が楽しめる北十間川に架かる「十間橋」や、隅田川の川辺にそびえるアサヒビール本社の有名な「炎のオブジェ」とのコラボレーションなど、スカイツリー観賞スポットも網羅。
もちろん東京タワーだって負けてはいない。
数ある東京タワー観賞スポットの中でも、東側に広がる芝公園の4号地から眺めるタワーは別格だ。豊かな公園の緑が外界の余計な光を遮断し、空に向かって屹立するその姿は、スカイツリーとはまた異なる美しさを放つ。
他にも、訪日観光客に人気のあの渋谷のスクランブル交差点を見下ろすのに格好のスポットとなるファッションビルの展望スペース「MAGNET CROSSING VIEW」をはじめ、複合施設「パレットタウン」の直径100メートルの大観覧車から眺めたお台場エリアなどの近未来的な夜景があるかと思えば、桜の名所として知られる北区の飛鳥山公園の西側に架かる歩道橋から眺める行き交う都電荒川線など、昭和にタイムスリップしたような光景まで、都内の夜景スポット137カ所を網羅する。
夕暮れ時、若洲海浜公園から望むライトアップされた東京ゲートブリッジの橋げたの下に浮かび上がるシルエットの富士山など浮世絵を彷彿とさせる風景や、狭山丘陵の南部、村山貯水池(多摩湖)の堤防から眺める絵画のような夕焼けなど、トワイライトタイムがおすすめの場所もある。
中には、登山道を70分もかけて登らなくてはならない景信山の山頂などたどり着くのにハードルの高い場所もあるが、標高727メートルの山頂広場からの眺望は東京都の山で最大級の視界の広さを誇り、いつかは挑戦してみたい。
また、展望ロビーにレストランも併設され、ディナーを楽しみながら夜景を眺めることができる練馬区役所本庁舎など、リーズナブルな穴場スポットも多数収録。
デートコース選びや、英訳解説も添えられているので訪日観光客の案内にも使えるおすすめガイド本だ。
(創元社 1500円+税)