「続 ムダな医療」室井一辰著

公開日: 更新日:

 アメリカでは近年、医学界が中心となった「チュージング・ワイズリー(Choosing Wisely)=賢く選ぼう」という活動が広がっている。メリットよりもデメリットが上回る医療行為をリスト化することで、ムダな医療を見極める指標にしようというキャンペーンだ。オーストラリアやニュージーランドなど本格的に注力する国も増えており、国際的にも影響力を持ち始めている。

 本書では、日本人にとっては一般的でも、世界的に権威のある医学会などは“受けない方がいい”としている約300の医療行為について示している。

 不必要な医療の象徴ともいえるのが、前立腺がんに対する医療行為であると本書。アメリカ予防医学会では、症状を伴わない男性に対して、PSA検査によるがん検査はデメリットが大きいと指摘している。PSAは前立腺に何らかの病気が発生すると血液中で上昇するため、前立腺がんの可能性を判断できるとして重宝されている。しかし前立腺肥大や感染症など命に直結しない病気でも上昇し、誤った陽性反応が出ることで、不必要な治療で体に負担をかける恐れもあるのだ。

 上の血圧を150㎜Hgまで下げると脳卒中などを減らせることが分かっており、高血圧治療の意義は明らかだが、75歳以上の高齢者の場合は、降圧薬を安易に使わない方がいい。降圧剤により低血圧になり過ぎるケースがあり、転倒が増えたり、心血管疾患を増やすリスクも高くなるためだ。高齢者の高血圧には、薬よりも生活習慣の改善で対処するのが望ましい。

 腰痛や尿管結石、不妊治療や子供への検査まで、さまざまな“受ける価値なし”の医療を解説。ムダな医療から身を守るための知識を付けておきたい。

 (日経BP社 1500円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    八角理事長が明かした3大関のそれぞれの課題とは? 豊昇龍3敗目で今場所の綱とりほぼ絶望的

  2. 2

    フジテレビにジャニーズの呪縛…フジ・メディアHD金光修社長の元妻は旧ジャニーズ取締役というズブズブの関係

  3. 3

    元DeNAバウアーやらかし炎上した不謹慎投稿の中身…たびたびの“舌禍”で日米ともにソッポ?

  4. 4

    松本人志は「女性トラブル」で中居正広の相談に乗るも…電撃引退にショック隠しきれず復帰に悪影響

  5. 5

    ついに不動産バブル終焉か…「住宅ローン」金利上昇で中古マンションの価格下落が始まる

  1. 6

    フジテレビ顧問弁護士・菊間千乃氏に何が?「羽鳥慎一モーニングショー」急きょ出演取りやめの波紋

  2. 7

    大谷翔平の28年ロス五輪出場が困難な「3つの理由」 選手会専務理事と直接会談も“武器”にならず

  3. 8

    菊間千乃は元女子アナ勝ち組No.1! フジテレビ退社→弁護士→4社で社外取締役の波瀾万丈

  4. 9

    中居正広「引退」で再注目…フジテレビ発アイドルグループ元メンバーが告発した大物芸能人から《性被害》の投稿の真偽

  5. 10

    中居正広「華麗なる女性遍歴」とその裏にあるTV局との蜜月…ネットには「ジャニーさんの亡霊」の声も