いまどきの大学
「京大変人講座」酒井敏ほか著
この4月に文科省が始めた「専門職大学・専門職短期大学制度」の実態は全国でわずか3校。いまどきの大学って何?
東大の永遠のライバルが京大こと京都大学。ノーベル賞受賞の卒業生(学部)も東大8人対京大7人と互角だ。本書はゴリラ研究の山極寿一総長をゲストに、京大教授・准教授計6人が登場。インタビューで自分の研究を紹介する。
専門分野は海洋物理学、進化生物学、地球岩石学など聞くだけで好奇心が湧く。またシステム工学者は、一度通った道は表示が薄くなり、だんだん見えなくなる「カスれるナビ」を開発。後戻りしようにもできなくなるわけだが、そのナビを使った人のほうが町の風景をきちんと記憶していることが実験で判明したという。当たり前と思う常識への疑問を育てる知性と感性。それが大学の原点ということか。 (三笠書房 1600円+税)
「教養教育再考」東谷護編著
大学改組のたびに話題になるのが教養教育。昔は「パンキョー」(一般教養)と呼ばれて低く見られ、今は効率最優先のグローバル化のもとで「結果を出せ」と締め上げられる。
本書は東大、早大、芸大、東工大などで教養教育に関わった6人が語る「これからの教養」論。
東大駒場の教養課程で英語科目を大改革した東大名誉教授はNHK英会話や放送大学での経験まで踏まえ、「いくら勉強しても英語ができない」日本人のナゾを解き明かす。
教養こそ本物の知性と実感する。 (ナカニシヤ出版 2600円+税)
「教養としての政治学入門」成蹊大学法学部編
安倍首相の母校(!)でもある成蹊大法学部で政治史、政治理論、国際政治、福祉、行政、地方自治などの専門家がそれぞれ入門的な論文を執筆。天下りや非効率で悪名高い公務員制度批判の再検討や日中国交正常化を軸とした戦後の日本外交の展開、また米・中・独・ロを舞台にした現代政治の問題点など、興味深い話題が並ぶ。
明らかに教科書の一つとして企画されたものだろうが、地元武蔵野市と連携した市民講座などにも熱心な成蹊大だけに、引退した高齢市民などにも手ごろな教養本だろう。 (筑摩書房 1000円+税)