ほんとは役立つ統計
「統計という名のウソ」ジョエル・ベスト著 林大訳
厚労省の統計改ざん騒ぎ以来、統計への信頼が激しく揺らいでいる。
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アメリカの大学で「刑事司法学部」の主任教授の座にあるという著者。人々が「統計リテラシー」を持つべきだという。リテラシーとは「読み書き能力」。つまり「統計数字を正しく理解し、間違いを見抜く力」だ。著者は中立な統計はあり得ないという。
たとえば自殺率とか犯罪件数とか景気の良し悪しなどを統計で示されると、人は驚いたり恐怖したりする。だが、実はどんな数字にも必ず偏りがあり、実態がどうであれ、そのように見せかけることができる。景気がいかにどん底状態でも「前年比〇%増」といわれただけで人はうれしくなり、時の政府を支持したりするわけだ。統計を見るときは「欠けているデータは何なのかを見よ」、という著者のアドバイスに納得。
(白揚社 2600円+税)
「マンガでわかる統計学入門」滝川好夫著
マンガ大国ニッポンは学習マンガも花盛り。本書も統計の初歩をマンガで解説する入門書だ。
ストーリーは美人3姉妹のうち1人だけ勉強ギライの次女が大学で単位不足。あわてて統計のクラスに合格するため、秀才の姉に教えを請うというお決まりのパターンだ。
マンガにしては吹き出しの量が多いが、統計を学ぶ初学者の違和感を下げるのが目的の本書。
初歩的な疑問を上手に救うのにマンガは向いてそうだ。
(新星出版社 1700円+税)
「プロ野球でわかる!はじめての統計学」佐藤文彦著
今日でこそ当たり前になったデータ野球。その基礎が統計といえばナルホドと納得する人も多いだろう。著者は野球データを専門にするブロガーで、元日本テレビの野球データ担当者の監修下でまとめた入門書。もちろん大半が野球の例だから統計初心者のほか野球ファンにもオススメだ。
たとえばデータの母集団と標本の関係(一部のサンプルだけで全体を語っていいのか)の章。「フライの多い投手よりゴロの多い投手のほうがいい」という通説から始めて「誤差」の概念の説明に移るなど、レベルを維持しながら読みやすさを工夫する配慮がある。
NHKで人気の「球辞苑」を見るときのお供に最適?
(技術評論社 2280円+税)