「行基」岳真也著
平城京の工事に駆り出された人々は疲れきっていた。彼らのために衣食を与える布施屋を造り、病んだ人々のために施療院を造って、仏の道を説いたのが行基だった。行基は金光明経の「王法を犯して鞭打たれ、捕縛されようとも、衆生を救済し、苦渋・苦悩する人びとを解脱させるべし」という教えに従って行動したため、朝廷に疎まれ、養老6(722)年に奈良の都から追放された。 行基が出家したのは15歳のときだった。同郷の僧で、行基が生まれる15年前に留学僧として唐に渡り仏教を学んだ道昭が帰国し、実家に戻っていた。いとこの願いで道昭に会いに行った行基は、やがて道昭の弟子となる。
民の救済に生涯を捧げた行基を描く歴史小説。
(KADOKAWA 1800円)