「荒仏師 運慶 」梓澤要著

公開日: 更新日:

 奈良の仏師・康慶の嫡男として生まれ、幼い頃から「美しいもの」へのこだわりが人一倍強いながらも、母には醜い顔だと言われて育った運慶。しかし、彼は父がノミを操って鮮やかな造形を生み出していく姿に魅了され、仏師の世界に没入することで美を追求し続けた。

 京仏師全盛の時代、奈良の仏師は京仏師の下請けの仕事を請け負うことも多かったが、運慶は鎌倉武士との出会いによって東国に向かい、新しい仏師の世界をつくり上げていくのだった。

「喜娘」で第18回歴史文学賞を受賞した著者による最新作。

 源平争乱の時代、源頼朝や北条政子が歴史のひのき舞台で活躍する中、仏師としての運慶がどのようにして自らの仏を作り上げていったのか、躍動感あふれる国宝・東大寺南大門の仁王像を作り上げた背景には運慶のどんな思想があったのか、その模索の変遷をたどっていく。

 仏教学に造詣の深い著者ならではの、まるで運慶が乗り移ったかのような語り口も力強い。(新潮社 1800円+税)


最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    大谷翔平の28年ロス五輪出場が困難な「3つの理由」 選手会専務理事と直接会談も“武器”にならず

  2. 2

    “氷河期世代”安住紳一郎アナはなぜ炎上を阻止できず? Nキャス「氷河期特集」識者の笑顔に非難の声も

  3. 3

    不謹慎だが…4番の金本知憲さんの本塁打を素直に喜べなかった。気持ちが切れてしまうのだ

  4. 4

    バント失敗で即二軍落ちしたとき岡田二軍監督に救われた。全て「本音」なところが尊敬できた

  5. 5

    大阪万博の「跡地利用」基本計画は“横文字てんこ盛り”で意味不明…それより赤字対策が先ちゃうか?

  1. 6

    大谷翔平が看破した佐々木朗希の課題…「思うように投げられないかもしれない」

  2. 7

    大谷「二刀流」あと1年での“強制終了”に現実味…圧巻パフォーマンスの代償、2年連続5度目の手術

  3. 8

    国民民主党は“用済み”寸前…石破首相が高校授業料無償化めぐる維新の要求に「満額回答」で大ピンチ

  4. 9

    野村監督に「不平不満を持っているようにしか見えない」と問い詰められて…

  5. 10

    「今岡、お前か?」 マル秘の “ノムラの考え” が流出すると犯人だと疑われたが…