「荒仏師 運慶 」梓澤要著
奈良の仏師・康慶の嫡男として生まれ、幼い頃から「美しいもの」へのこだわりが人一倍強いながらも、母には醜い顔だと言われて育った運慶。しかし、彼は父がノミを操って鮮やかな造形を生み出していく姿に魅了され、仏師の世界に没入することで美を追求し続けた。
京仏師全盛の時代、奈良の仏師は京仏師の下請けの仕事を請け負うことも多かったが、運慶は鎌倉武士との出会いによって東国に向かい、新しい仏師の世界をつくり上げていくのだった。
「喜娘」で第18回歴史文学賞を受賞した著者による最新作。
源平争乱の時代、源頼朝や北条政子が歴史のひのき舞台で活躍する中、仏師としての運慶がどのようにして自らの仏を作り上げていったのか、躍動感あふれる国宝・東大寺南大門の仁王像を作り上げた背景には運慶のどんな思想があったのか、その模索の変遷をたどっていく。
仏教学に造詣の深い著者ならではの、まるで運慶が乗り移ったかのような語り口も力強い。(新潮社 1800円+税)