「暗殺者の追跡」(上・下) マーク・グリーニー著 伏見威蕃訳
グリーニーはホントにすごい。主人公コート・ジェントリーの乗るジェット機がイギリスの空港で襲撃される冒頭から、スコットランドの古城におけるラストの戦いまで、休む間もなく迫力満点のアクションが続くのである。アクション小説が好きな読者なら、もうたまらない。
余分な知識は何もいらない。これが、コート・ジェントリーを主人公とするシリーズの第8巻であるとか、そのうちの5巻は第1期で、ずっとCIAに追われていたとか、ただいまは第2期の3巻目で、CIAとは和解しているとか、そういうことも知らなくていい。ここに登場するゾーヤが元SVR将校で、前々作の「暗殺者の飛躍」からの再登場であることや、元上官のザック・ハイタワーとは長い知り合いであることも、全然知らなくてかまわない。
CIAとの対立から和解、というように、ゆるやかに連なっているけれど、厳密に続いているシリーズではないので、どこから読んでもいいのだ。それよりは細部を楽しまれたい。これほど迫力あるアクションシーンを読むことができるとは、まったく信じられない。シリーズ第1作が翻訳されたとき、「冒険小説の神が21世紀に降臨した」と書いたものだが、そのパワーがいまだに持続しているから素晴らしい。
クレイグ・トーマスなどの冒険小説を愛読していた年配の読者には特におすすめだ。
(早川書房 各880円+税)