公文書の改ざんには刑事罰を導入せよ
公文書とは、公務員が職務遂行の必要から作成するもの。後世の政策選択のためにも参照されるべき、国民共有の知的資源でもある。そして、行政の説明責任を担保するものだからこそ、公文書管理法という法律も制定されている。
ところが、公文書が意図的に記録されず、隠蔽や改ざんされる事態が続発している。瀬畑源著「国家と記録」(集英社 840円+税)では、近年の公文書問題をひもときながら、本来あるべき公文書管理体制を考察している。
陸上自衛隊の派遣部隊の日報隠蔽や、森友学園問題での財務省の決裁文書改ざんなどを受けて、政府は2018年7月20日の閣僚会議で「公文書管理の適正の確保のための取組について」を決定。内閣府の独立公文書管理監(以下、管理監)を局長級に格上げして行政文書管理の司令塔とし、各府省にも公文書管理を適正に行うための役職を設置した。
しかし、重要なのはその役職に何をさせるかだと本書。そもそも、管理監は国民に公開しないことを前提とする特定秘密の検証と監察を行う組織。国民への公開の基盤となる公文書管理の司令塔にふさわしいかは疑問が残る。
さらに、公文書管理法には罰則が存在していない。罰則を作ると職員が萎縮して文書を作成しなくなる可能性があるためだ。森友学園問題でも、検察は公文書改ざんに関わった財務官僚の起訴を断念している。本書では、刑事罰の導入も視野に入れながら公文書管理法を改正し、「個人資料」という逃げ道をなくすために個人資料にできる文書を定義してしまい、その他の業務上作成する文書は原則行政文書とするべきだと主張している。
私たちは、国民の知る権利がどう扱われているのかをもっと知るべきだ。