「迷いながら生きていく」五木寛之著
親が教師だった著者は、生後まもなく朝鮮半島に渡り、各地を転々とした後、引き揚げてきた。その後も、九州、東京、金沢、京都、横浜などに住んだため、場所に対する帰属意識がない。自分はホモ・モーベンス(動く人)であり、「デラシネ」だと思っている。デラシネとは「根無し草、故郷を持たない人」だが、「難民」とか「移民」のほうが合っていると思う。五木は21世紀は「デラシネの世紀」だと考える。シリアなどの難民だけでなく、東日本大震災や熊本地震の被災者も一時的なデラシネである。災害や戦乱は今後も起こり得るし、未来は不可測なのだ。
〈人生百年時代はデラシネの世紀〉
「人生百年時代」に贈る五木寛之のエッセー。
(PHP研究所 1350円+税)