「結果を出すリーダーはどこが違うのか」竹中平蔵編著/幻冬舎/2019年
竹中平蔵氏のリーダー論は面白いし役に立つ。それは竹中氏が時代の危機を強く認識しているからだ。
<そして、今また日本にとって変革の時です。時代がリーダーを求めるのであり、現代がまさにその時期だと思います/偉大なる歴史に残るようなリーダーが出てきてほしい、いえ、出てこなければなりません。そして、それは少しでも早いほうがいいのです/ただ、残念ながら、現代の日本はリーダーが生まれにくくなっています。メディアは、善し悪し関係なく権力者を叩き、冤罪を作り出します。しかし、そうしたレピュテーションリスクを超えるカリスマ性を持つ人物が、必ずや現れると信じています>
日本の20代、30代にもリーダーとしての優れた素質を持っている人たちがいる。しかし、その素質を十分に生かすことができていない。その原因は、物事を大局的にとらえる場所に立つ機会がほとんどないからだ。企業ならばグループリーダーや課長として優れたリーダーシップを発揮できても、それより上のポストに就くと、適応不全を起こす人が多数いる。この問題を解決するヒントが本書に記されている。
竹中氏はリーダーシップの専門家であるハイフェッツの「バルコニーに駆け上がれ」という言葉を重視する。
<リーダーというのは、組織の中に何か新しいものを持ち込む存在です。だからこそ、必ずリスクに直面する。新しい変化を持ち込むといいことがある半面、摩擦も必ず生じますから、それをあげつらう人たちに批判をされるわけです/もちろんリーダーの地位を狙う人たちもおり、その人たちに刺されるかもしれない。特に政治家の中でリーダーの立場にいる人たちは、そうした危険に常にさらされているわけです/だからこそ、ときどき現場から離れてバルコニーから俯瞰してみよ、ということをハイフェッツは言っているのです。現場は大事ですが、あえて距離を置くことによって自分の位置を確かめろという教えです>
今、自分がいる現場の利害関係を離れて、会社全体の利害を中長期的視点から考察する訓練を20代のうちからしておくことが、将来リーダーになる条件だと思う。
★★★(選者・佐藤優)
(2019年12月5日脱稿)