「僕らはSNSでモノを買う」飯髙悠太著ディスカヴァー・トゥエンティワン
ネット広告費がテレビ広告費を今年中に追い抜く見込みだ。学生がテレビを持たず、スマホばかり見ている現状を考えると、さもありなんという気がする。
ただ、長年親しんできたテレビCMと比べて、我々はネットでの広告の仕組みをよく知らない。もちろん、ヤフージャパンのホームページなどに出てくる企業広告や、検索エンジンで検索したときに真っ先に出てくる商品情報の広告は、よく知っているのだが、著者によると、そうした広告の料金は高騰を続けていて、中小企業では利用が難しくなってきているのが現実だそうだ。
そこで、著者が推奨しているのが、ULSSASというマーケティング手法だ。具体的には、U:ユーザー投稿コンテンツ、L:ライク(お気に入り)、S:SNSでのサーチ、S:検索エンジンでの商品サーチ、A:アクション(購買)、S:スプレッド(拡散)という循環を広げていけばよいという。
そう書くと難しく感じるかもしれないが、誰かが自社商品を褒める投稿をして、それを見た友人がその商品を検索し、購入した後、さらにその商品を褒める投稿をするという流れだ。つまり、口コミの評判がどんどん広がっていく状況をつくり出すということだ。
もちろん、それは口で言うほど簡単なことではない。しかし、著者はSNSを利用したマーケティングのコンサルタントをしているので、話が具体的で、わかりやすい。
例えば、シャトレーゼという洋菓子店がある。その公式アカウントで、自社製品のアイスクリームを使ったカクテルを紹介する。それを見た一般読者が「自分もこんなカクテルを作りました」という投稿をする。それを公式アカウントでリツイートすると、我も我もと新しいカクテルのレシピの投稿者が増えていき、それに呼応する形で、シャトレーゼのアイスクリームの売り上げが増えていくという仕掛けだ。
なるほどと思う一方で、こんなことで何でも売れるのかという疑問も湧く。しかし、著者は「商品自体に魅力がなければ、情報は拡散されない」と言っている。その通りだ。
ネットで商品やスキルを売りたい人に、基礎が学べるお薦めの書だ。
★★半(選者・森永卓郎)