「Team・HK」あさのあつこ著
ドイツには「人生の半分は整理整頓ですべてうまくいく」という諺があるそうだが、本書には「幸せになりたけりゃ、窓を磨け」という諺(もっともこれは作者の創作のようだが)が出てくる。いずれにしても身の回りをきれいにしておくことは何らかの幸運をもたらしてくれる、という考えは共通している。
【あらすじ】佐伯美菜子は結婚して15年、中学生の娘と小学生の息子の2人の子どもを持つ40歳目前の専業主婦。夫からは「典型的な主婦思考しかできない」と見下され、引っ込み思案で人と話すのも得意ではない。
そんな美菜子の目に、「家事力、主婦力、主夫力を発揮させましょう」と書かれたスタッフ募集のビラが飛び込んできた。毎日当たり前のようにこなしている家事が“力”になるというのが驚きだった。早速ビラを出したTeam・HKの事務所を訪れる。HKはハウスキーパーの略で、掃除を主体に家事の代行をする会社だ。掃除が好きかと聞かれ、「好きだ」と答えると即採用。あっと思う間もなく仕事に連れ出された。
訪れたのは自称「ベストセラー&人気作家」那須河闘一の家。執筆に詰まると家中を汚し放題にして、どうしようもなくなると掃除をしてもらうのだという。
よし、初仕事と思って張り切る美菜子だが、なぜか那須河は美菜子を話し相手に指名しあれこれ語り始める。話の流れで、美菜子が昔、ある洋館の老女の死体を見たことを話すと、那須河はにわかに興味を寄せ、その話を詳しく聞かせろと迫ってくる……。
【読みどころ】掃除にミステリーを絡めるというユニークな仕立てだが、それまで自信をなくしていた美菜子が掃除という仕事を通して生きる力を得ていくのが本書の読みどころ。 <石>
(徳間書店 650円+税)