「すばらしい新世界」 オルダス・ハクスリー著、黒原敏行訳

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【全体主義】

 1932年に発表された本書の舞台は西暦2540年。この未来社会は計画的な大量生産のフォード・システムを至上とし、生殖までもが徹底管理されていた。子どもはすべて人工授精によって〈壜(びん)〉から生まれ、細胞分裂の段階で操作を施しアルファ、ベータ、ガンマ、デルタ、イプシロンの5階級に振り分ける。階級に応じて知的労働、単純作業などの仕事を割り当て、不満が出ぬよう長時間にわたる条件反射育成(洗脳)が行われる。しかし、最上層階級アルファに属するバーナードとヘルムホルツは、〈蛮人保存地区〉のジョンと出会うことでこの国のあり方に疑問を感じ始める……。

 強圧な管理社会に、不便で不幸になる権利があると異を唱えるジョンを通して、全体主義の危険性を提示した古典的名著。

(光文社 1060円+税)

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