5G時代がやってくる

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「5G」森川博之著

 今年から携帯大手がサービスを開始した5G。本格的なテレワーク時代の幕開けといわれる一方、日本は出遅れともささやかれるが……。



 今年3月、コロナ騒ぎが加速する中で携帯大手各社が5Gサービスを開始した。中国が一歩先を行くといわれる5Gとは何か。本書は東大教授のインターネット工学者が「次世代移動通信規格の可能性」を解説している。

 これまでの4Gではスマホが生活の主舞台に大きく進出したが、今後は「建設機械、工作機械、物流で使われるパレット、スーパーマーケットの値札、手術ロボットなど、あらゆるモノが5Gでインターネット接続される」という。4Gはヒトへのサービス、5Gはそこにモノが加わるというのだ。

 具体的には何か。これまでのネットはひたすら高速化を目指したが、5Gでは「低遅延」が起こる。カメラで捉えた人物の特徴から性別、年齢などの属性情報を取得し、それに応じた広告をリアルタイムに表示することができる。「速い」ではなく「遅れなし」だ。監視カメラの映像の顔部分だけをリアルタイムで検知してボカシを入れるなども可能になるのだ。「高速化」や「多数同時接続」も4Gよりぐっと速く、多くなる。4Gでも可能だったことが5Gでは当然になる。コロナ禍で本格的なリモート時代になれば5Gは必須になるわけだ。日本では導入が遅いと言われるが、「開始時期は重要ではない」と断言。大事なのはサービスの質。また5G分野では日本企業の優位もあるという。

 工学者らしいキビキビした文章は読みやすい。米トランプ政権が敵視する中国企業ファーウェイの内実なども詳細に解説している。

(岩波書店 860円+税)

「60分でわかる!5Gビジネス最前線」佐野正弘著

 5G時代の到来で生活やビジネスはどう変わるのか。見開き1項目の形式で徹底解説した実用書だ。

 数年前までは世界でもさほど急がれなかったのが5G。早くから今年導入を明らかにしていた日本は「早すぎる」といわれたほどだという。ところが過去2年ほどで米中韓が先陣争いする展開に。米中はとくに、安全保障で遅れまいと競う。日本では人口減少に悩む地方の再活性化(地方創生)と医療やインフラなど社会的課題の解決に5Gを役立てようとしている。

 期待は大きいが「5Gエリアはすぐには広がらない」など問題点も率直に指摘している。

(技術評論社 1100円+税)

「データの世紀」日本経済新聞データエコノミー取材班編

 ネットではプライバシーなどダダ漏れと言われる。5Gになればなおさらだろう。

 ネットユーザーのアクセス記録からキャッシュレス認証の情報、買い物履歴、その他すべてのデータが他人に把握され、知らないうちに利用される。誰もが「データ資源」になる現代。その実相を経済紙ならではの精力的な取材で連載ルポしたのが本書だ。

「内定辞退率」を企業に提供したとして信用ガタ落ちになったリクナビ、「フェイク」と「パロディー」の境目でネット検閲か言論の自由かで悩むアメリカ、「人の美しさ」をAIで点数化するしくみを開発した香港企業など5G直前のネット社会を多面的に伝える。

 中国ハッカー集団発らしい偽装メールは日本政府の「有識者会議」のスタッフを名乗って東大教授らに送られたという。政治すら手玉に取るネット時代の実態。

(日本経済新聞出版社 1500円+税)

【連載】本で読み解くNEWSの深層

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