「外資のオキテ」泉ハナ著
外資系企業の人気が高いという。国内企業に比べて外資がいい理由として、自分の裁量で仕事ができること、有給休暇や長期休暇などを遠慮なく行使できる、年功序列という上下関係はなく、風通しがいい、などが挙げられている。反対に、評価がシビアで長期に働くことへの不安などもあるが、国内企業と違った企業風土があることは確か。本書は小さい頃から英語を使う仕事に憧れていた女性が主人公だ。
【あらすじ】国内の大手企業に就職した貴美子は、幼い頃の夢を果たすべく27歳を迎える直前、アメリカへの語学留学を決行。懸命に勉強してTOEICで高いスコアを獲得、張り切って外資就活に臨む。
ところが人材紹介会社の面接で、語学留学は何のキャリアにもならないどころかかえってマイナスだといわれてショックを受ける。おまけに面接官の英語はネーティブ並みで、自分の英語力がいかに貧しいものかを思い知らされる。それでもめげず、紹介された企業へ派遣で赴く。その会社はすでに閉鎖が決まっていて仕事は店じまいの手伝いといったところだが、上司のプロフェッショナルな仕事ぶりを見たことが大きな経験となった。
次に行った生命保険会社では念願の秘書業に就くことができたが、その上司はとんでもないパワハラ女性で社内に名をとどろかせていた……。
【読みどころ】広いオフィスで流暢に英語を話し、時には海外出張で世界各地を飛び回る――そんな貴美子の甘い夢は見事に打ち砕かれてしまったが、いくつかの会社を経験したことで、大事なのは、外資も国内も関係なくきちんとした仕事をすることだという当たり前のことに気づく。
「外資系あるある」が満載のお仕事小説。 <石>
(KADOKAWA 680円+税)