「建築士・音無薫子の設計ノート」逢上央士著
リフォームとリノベーション、この2つはどう違うのかという客の質問に対して、本書の主人公は、リフォームというのは建築に何らかの問題があって、それを直したり設備を新しくすることで、「住み手自身が何らかの問題を抱えていると思われる場合、その問題を解決するために行うのがリノベーション」だと答える。この言葉通り、本書ではさまざまな問題がリノベーションによって見事に解決されていく。
【あらすじ】今西中は建築を学ぶ大学生で、研修生として音無建築事務所で働いている。所長の音無薫子は天才的な観察眼を持つ建築士で、顧客の抱える問題をその建物から発せられるサインを読み取って解決の道筋を示す。助手の月見里一は問題を手際よく整理するという点で抜きんでた才能を持つ。今西はそんな2人の下で働きながら建築の勉強をしている。
引っ越し先のマンションの挨拶回りで上階の雨野の部屋を訪れた今西は、妻子が家を出て行き部屋の模様替えを考えていた雨野からリノベーションを頼まれる。その話を事務所に持ち帰り3人で改めて雨野の部屋に行くと、ザッと部屋を眺めた薫子は雨野に部屋の中の家具など全部要るものと要らないものを赤と青の付箋で仕分けするように指示する。
結果、雨野は子供用のコップを除いてすべてに赤い付箋を付けた。雨野はそれ以外はそのままと思ったのだが、薫子は赤い付箋のものを全部部屋から運び出してしまった。薫子はその部屋から何を読み取ったのか?
【読みどころ】そのほか、犬のために部屋全部を犬小屋にして欲しいという愛犬家、家の内装から何から何まで真似し合う姉妹など、奇妙な問題を抱える施主の悩みを解決していく薫子は、まさしく建築探偵だ。 <石>
(宝島社650円+税)