「スター」朝井リョウ著
主人公は、ぴあフィルムフェスティバルでグランプリを受賞した立原尚吾(たちはら・しょうご)と大土井紘(おおどい・こう)。2人とも大学3年生で、2人で1つの作品を監督するという話題性もある映画での受賞だったこともあり、世間から大いに注目を浴びた。
大学卒業後、尚吾は憧れの名監督・鐘ケ江誠人が所属する映像制作会社に入社し、紘は就職せず友人から頼まれたユーチューブの映像制作を始める。尚吾は、監督補助の仕事をしつつ細部にこだわった脚本を練っていたが、修業期間が今後短縮されそうなことに加えて、紘が撮影している動画が50万回以上視聴されている人気動画になったことを知り、衝撃を受ける……。
「桐島、部活やめるってよ」で第22回小説すばる新人賞を受賞してデビューし、「何者」で第148回直木賞、「世界地図の下書き」で第29回坪田譲治文学賞を受賞するなど、快進撃を見せる著者の最新作。高品質な作品を作る環境にありながら収益が尻すぼみになっていく業界に身を置く尚吾と、スピードが要求され質の担保が難しい世界に身を投じた紘の姿から、今の時代に生きる表現者が直面するリアルな問題が見えてくる。
(朝日新聞出版 1600円+税)