「食べることと出すこと」頭木弘樹著

公開日: 更新日:

 大学生の時、潰瘍性大腸炎を患った著者は、食事と排泄(はいせつ)を常に意識せざるを得なくなった。本書は、カフカ研究家として著名な著者が、自身の体験から見えた世界と闘病の中で心の支えとした文学作品の一節を紹介したものだ。

 入院した当初、著者は中心静脈栄養だけに頼る、飲まず食わずの絶食を1カ月以上経験する。すると、栄養は足りているのに、喉や顎や舌などの各部位が飲みたい、噛みたい、味わいたいという欲求で暴れ出す。

 さらに絶食明けには何を食べても大喜びかと思いきや、味覚が敏感になり過ぎて添加物の入った食べ物を食べられない羽目に陥ったり、食に制限があることで人間関係にヒビが入ったり。加えて便を漏らしやすくなったことから、自然と引きこもり生活に突入していく……。

 新型コロナの流行で、人々は外食や外出を控える新しい生活様式を始めたが、著者にとってはまるで自分の生活に世の人々が近づいてきたかのようだったという。病気と付き合わざるを得なくなった時、人の心にどんな変化が起こるのか、さらにそうした人々に文学はどう寄り添うのかを教えてくれる。

(医学書院 2000円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    フジテレビ問題でヒアリングを拒否したタレントU氏の行動…局員B氏、中居正広氏と調査報告書に頻出

  2. 2

    大谷の今季投手復帰に暗雲か…ドジャース指揮官が本音ポロリ「我々は彼がDHしかできなくてもいい球団」

  3. 3

    フジテレビ第三者委の調査報告会見で流れガラリ! 中居正広氏は今や「変態でヤバい奴」呼ばわり

  4. 4

    フジ反町理氏ハラスメントが永田町に飛び火!取締役退任も政治家の事務所回るツラの皮と魂胆

  5. 5

    下半身醜聞ラッシュの最中に山下美夢有が「不可解な国内大会欠場」 …周囲ザワつく噂の真偽

  1. 6

    “下半身醜聞”川﨑春花の「復帰戦」にスポンサーはノーサンキュー? 開幕からナゾの4大会連続欠場

  2. 7

    フジテレビ「中居正広氏に巨額賠償請求」あるか? 「守秘義務解除拒否」でウソ露呈

  3. 8

    今田美桜「あんぱん」に潜む危険な兆候…「花咲舞が黙ってない」の苦い教訓は生かされるか?

  4. 9

    Kōki,『女神降臨』大苦戦も“演技”は好評! 静香ママの戦略ミスは「女優でデビューさせなかった」こと

  5. 10

    高嶋ちさ子「暗号資産広告塔」報道ではがれ始めた”セレブ2世タレント”のメッキ