「ザ・ギャンブラー」ウィリアム・C・レンペル著 上杉隼人訳
1960年代末、アメリカの実業界にどこからともなく1人の男、カーク・カーコリアンが現れた。ギャンブルを好み、中学しか出ていないが50歳にして突然大金持ちになった男――。飛行士でもあった彼は、戦後の苦境時に小さな航空輸送サービスを手掛け、それをのちに売却して巨万の富を得る。そして根っからのギャンブラーだった彼は、発展しつつあったラスベガスに目をつけ、その資産をレジャー産業につぎ込む。
60年代当時、世界最大だったインターナショナル・ホテルをラスベガスにつくり上げ、続いてMGMグランドホテルとカジノをオープン。やがて映画会社や自動車会社を買収、一方でエルビス・プレスリーをスターに押し上げていく……。
アルメニア移民の一文無しから逆転に次ぐ大逆転劇を果たしたカーク・カーコリアンの知られざる生涯をつづったノンフィクション。
所有するホテルやレストランでは無料を嫌い、慈善活動に熱心だった。名前を明かさない約束で寄付し、感謝の言葉を公にされることは一切固辞したという。大胆にして謙虚。ビジネスの神様と呼ばれた男の冒険小説のような人生に迫る。
(ダイヤモンド社 1800円+税)