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「米中争覇」朝日新聞取材班

 米中対立が深刻化し、21世紀の「新しい冷戦」に発展しつつあるといわれる。「米中新冷戦」は現実なのか?



 国際関係学の専門家は「新冷戦」ということばを使いたがらないが、マスコミに登場する頻度が急速に上がっているのは事実。そこで本書は副題で「『新冷戦』は始まったのか」と問う。

 グローバル経済の進展で米中の相互依存は既成事実。しかし、オバマ政権の対中融和策が失敗したあと、トランプ政権による強硬姿勢への急転換は明らかに双方を鋭く対立させた。最近では個別分野ごとにデカップリング(相互依存の分離)が進んでいる。

 その象徴がファーウェイ。国際企業を標榜しながらも、実は中国当局の影響下にあると米下院の委員会が結論づけたのが2012年。つまり、トランプ以前、既にファーウェイ包囲網は構築され始めていたのだ。

 それでも17年のトランプ訪中時はまだ関係は穏やか。それが18年3月に米国が中国からの鉄鋼・アルミへ追加関税をかけることが決まると、政官民あげての「対中強硬」が始まり、今日の対決模様にまで発展した。しかし、本書は「新冷戦」か否かについて明確な結論を保留する。

 トランプ政権の対中強硬策は強気のようでも首尾一貫せず、「あまりに浅薄」だからだ。しかも、米中双方が「強さ」よりも「弱さ」を露呈しているという。何しろ傍若無人のトランプ外交に西側の同盟国はすっかり嫌気が差している。対する中国もリーダーとも思えぬ「戦狼外交」に加え、コロナ禍の拡大ですっかり評判を下げてしまった。

 結論は、どうやらバイデン政権に持ち越しのようだ。

(朝日新聞出版 1800円+税)

「米中『新冷戦』と経済覇権」奥村皓一著

 長年、国際経済を見守ってきた「週刊東洋経済」元記者の著者も「新冷戦」を安易には使わない。むしろ本書は「『新冷戦』化阻止のためのルール作りを」と呼びかける。

 覇権争いの激化はやむを得ないとしても、それが「冷戦」になれば、世界はさらに不安定化するだけ。とはいえ、トランプ政権は既に「『米中経済戦争』の枠組みからはみ出して」しまった。

 中国のほうも西側の金融・ビジネスが中国の社会主義の資本主義化(=国営企業の民営化)を望んでいることを知りながら、それでも国営企業の支配権を手放そうとはしない。結局どっちもどっちなのだが、放置すればいずれは「新冷戦」になってしまう。

 それを避けるための処方箋を示し、グローバル企業の税逃れを許さない仕組み作りも欠かせないと説いている。

(新日本出版社 2800円+税)

「〈米中新冷戦〉と中国外交」松本はる香編著

「新冷戦」が米中対立なら、中国側からの視点も当然必要なはずだ。本書は中国外交の専門家6人による論文集。米中に限らず、日中、中朝、中ロにそれぞれ注目し、新冷戦時代における「北東アジアのパワーポリティクス」(副題)に多角的に迫る試みだ。

 13年の全人代(全国人民代表大会)で党総書記、国家主席、中央軍事委員会主席の3ポストを一身で独占した習近平。そこで「中国の夢」(チャイナドリーム)の愛国主義と戦争に打ち勝つ「強軍目標」を強調して世界覇権を宣言した。これに対して米側はオバマ政権2期目から態度を徐々に変えたが、逆に中ロ関係は「蜜月」といわれるほど緊密化に向かっている。実は中ロは本来相いれないはずの歴史的間柄。しかし「一帯一路」計画の一部はロシアにもうまみがあり、5年の間に中ロの「どちらが主導権を握っているのかわからない」状態になったという。

 胡錦濤時代に比べて「硬直化」が目立つ習体制下の中国。その対米関係が果たして「冷戦」にまで発展してしまうのかは、今後を見守らないとわからない。

(白水社 2400円+税)

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