「ライト・スタッフ」山口恵以子著
太平洋映画会社の助監督採用試験に落ちた五堂顕は、脚本部に採用された浜尾杉子に誘われて、撮影所に行った。撮影中のステージ内から大声が聞こえた。「本番、よーいッ!」。見ていると、突然、セットの上方に火の手が上がる。顕が足元にあったヤカンの水をぶっかけると火は消えた。照明技師の佐倉に「君、所属は?」と聞かれ、部外者だと白状すると、バイトとして雇ってくれることに。
翌日、レフ板で太陽光を当てようとして、俳優の麻生和馬の左頬に大きな傷痕があるのに気づく。だが、ライトとレフ板が和馬を照らすと、その傷は消えた。照明ってこんなことができるんだ……。
映画が娯楽の王様だった昭和30年を舞台に、映画を支えた照明技師たちを描く長編小説。
(潮出版社 1800円+税)