「占領下のエンタテイナー」寺島優著
1967年、ピーター・ポール&マリーの2度目の来日コンサートでMCを務めたのが、著者の父、中村哲(さとし)である。日本移民の息子、中村は1908年、バンクーバーに生まれた日系カナダ人だ。
グロブナー・ホテルでベルボーイをしていたとき、常連客のヒックスが声楽教師であることを知り、弟子入りする。戦後は進駐軍クラブで人気歌手となり、藤原歌劇団のオペラ「カルメン」に出演。また、日活の演技者養成所で演技も学んでいたため、異国趣味のトンデモ映画で「怪しげな日本人」を演じたり、その一方で「レッド・サン」などの国際的な映画にも出演したりしている。
英語力や演技力を生かして八面六臂の活躍をした、サリー中村の一代記。
(草思社 2500円+税)