米新政権と日米関係
「対米従属の構造」古関彰一著
みずから“トランプのポチ”になった安倍前政権に対し、菅政権はアメリカの新政権とどう向き合うのか。
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そもそも戦後日本はアメリカに従属しっぱなしだった。敗戦後まもなく日本政府が調印した降伏文書の翻訳には、日本統治の権限を「連合国最高司令官ノ制限ノ下」に置くとある。ところが原文では「subject to」つまり「従属」や「隷従」の下という意味だというのだ。
著者は憲法学者として戦後日本の再軍備問題を長年研究。朝鮮戦争前夜から安保闘争を経て現在まで続く歴代内閣の対応をていねいに検証する。特に「自主防衛」を唱えた三木内閣、「軍事大国にはならない」と明言した福田内閣、対米従属からの脱却を本気で考えた「最後」といわれた大平内閣などの動きをフォローし、「『自主』から『従属』へと変質した中曽根首相をもって(自主防衛論は)終焉を迎える」と言い切る。
それは「ロン・ヤス」外交などと調子のいい言葉でアメリカにすり寄る態度が露骨になった点でも、今に続く本質的な従属関係への転落だったといえよう。
かつて敵国として正面から激突した日米が、なぜかくも強力な軍事関係を維持しているのか。それを日本の「国体」にさかのぼって論じた終章も読みごたえがある。
(みすず書房 3600円+税)
「日米安保と砂川判決の黒い霧」吉田敏浩著
1957年、米軍立川基地の中にあった民有地の強制収用を決めた日本政府に反対し、土地を取り上げられた農民と支援の学生が徹底抗戦。逮捕され、学生3人と農民4人が起訴されたが、地裁判決は米軍の駐留を「違憲」として無罪という画期的な結果に。ところがこれを憂慮した米政府は駐日大使のダグラス・マッカーサー2世(GHQ司令官の甥)を通してなんと最高裁に圧力をかけ、密談を交わしたあと、最高裁は米軍駐留を「合憲」とする判断を下した。
民衆レベルでは司法も毅然として独立を主張した日本で、支配層は唯々諾々とアメリカの言いなりになっていたわけだ。
実はこの事件では元被告らが謝罪と賠償を求めて国を訴えている。つまり戦後史に悪名高い砂川事件はまだ終わっていないのだ。著者は日本の再軍備問題を追及し続ける気骨のジャーナリストだ。
(彩流社 1500円+税)
「アメリカから遠く離れて」瀬川昌久、蓮實重彦著
片や最古参のジャズ評論家、片や元東大総長の映画評論家。しかしこの2人が戦前戦後の学習院初等科から中・高等科を経て東大へ進学した先輩と後輩だったことを知る人は少ないだろう。
冒頭から長く当時の学習院関係者にしか縁のない内輪話が延々続く。しかし怖めず臆せず語る2人の会話を通して、戦前の日本がアメリカの大衆文化に深く親しみ、魅了されてきたことが伝わる。戦前からあまたのレコードコレクターがジャズの音を聴き分け、演奏家たちも高い水準でプレーしていた。小津安二郎がアメリカ映画に影響されていたことは有名だし、ハリウッドのスターはそのまま日本でも大人気だった。
アメリカ文化は進駐軍が持ち込んだというわけではないのだ。
(河出書房新社 2400円+税)