がけっぷちの東京?
「都市に聴け」町村敬志著
緊急事態宣言でまたも“強制自粛”状態の東京。菅政権のもとでがけっぷちに追い込まれたのか。
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コロナ禍の拡大とともに「密」は避けるべき振る舞いになった。しかし都市は「密」こそが魅力の空間。満員の通勤電車は誰だっていやだが、人混みのない盛り場は気の抜けたビールと同じだ。では都市はどうなるのか。
本書は都市社会学者が書き下ろした「アーバン・スタディーズ」の試み。コロナの前から取り組んだ仕事だけに、より長期的に東京の変容を包括する視点が際立っている。
たとえば東京がこれほど大きくなったのはなぜか。第1は東京と横浜が一対の「ツインシティ」として発展したこと。第2は公営・私営の鉄道網が発達し、21世紀の今日もすたれてないこと。第3に戦時中に確保された飛行基地や軍用地が戦後の郊外化の空間となったこと。第4に拡大する郊外と昔ながらの江戸周辺の在郷地が混ざり合いながら都市でも農村でもない「駅前」という空間をつくり出したこと。これらが主因となって「だらだら広がる東京」が形成されたのだという。
しかし、いまコロナ禍の緊急事態で「集まる」ことが難しくなった。ではどうするのか。著者は安易な結論を避けながらもオンラインに「すべてが移行できたわけではない」という。現に少しでも緩めば感染が増えるのは依然として「密」の都市機能が衰えてないからでもあるだろう。
問い続けるための基本的な議論が展開されている。
(有斐閣 2900円+税)
「ようこそ、2050年の東京へ」榊淳司著
今から30年前、脱サラして不動産ジャーナリストとなって以来の長いキャリアを持つ著者は、東京の街は1990年当時と今とで「あまり変わっていない」という。店や看板やビルも新しくなっているが、「空気」が変わらない。
では30年後はどうか。ITの役割が大きくなり、街を行く乗り物は無人運転、コンビニも無人レジ。人々の働き方も大きく変わるだろう。
著者は30年後の東京は「ビジネスの街から遊楽の街へと脱皮」しているのではないかとみる。経済大国の地位から滑り落ちてビジネス面での魅力のあせた東京は、それ以外では世界中の旅行者に人気の都市であり続ける。
意外なほど楽天的な予想図。類書にありがちな統計データなどはここには出てこない。
その代わり東京中を歩き回ってきた体験と実感が、本書の説得力を支える源だ。
(イースト・プレス 860円+税)
「東京終了」舛添要一著
著者はいわずとしれた前東京都知事。公用車の使用や海外視察の際の公私混同問題で厳しく批判されて知事を辞任したが、本書では現小池都政について「中身のない大衆煽動」「貴重な時間とお金の浪費」と激しく批判する。
小池都知事は公約として掲げた「7つのゼロ」(ペット殺処分、待機児童、満員電車、残業、都道電柱、介護離職、多摩格差)のうちたった1つしか達成できず、鳴り物入りだった市場の豊洲移転問題でも2年遅れで元の計画に逆戻り。さらに五輪開催問題でもせっかく著者が達成した「2000億削減」の成果を現知事がふいにしたという。それでも再選されたのはひとえに「コロナ追い風」のおかげと手厳しい。
がけっぷちなのは東京か都知事の方か。できれば言いっぱなしに終わらず、なんらかの処方箋を示した結びにすれば単なる恨み節の印象をぬぐえたかもしれない。
(ワニブックス 870円+税)