「神様のカルテ」夏川草介著
つい先日まで全4回連続で放映されていた同名テレビドラマの原作。ドラマでは主人公の内科医、栗原一止を福士蒼汰。その妻で山岳写真家の榛名は清野菜名。一止にほのかに思いを寄せている有能な看護師、東西直美を大島優子。その他イッセー尾形、北大路欣也らが脇を固め、手堅いドラマ作りとなっていた。
【あらすじ】栗原一止は信濃大学医学部を卒業した後、松本平の中ほどに位置する本庄病院に勤め始め間もなく5年になる。この病院は「24時間365日対応」を掲げており、慢性的医者不足の中で対応しているため、40時間連続勤務も珍しくない。一止は幼い頃から敬愛する夏目漱石の影響から話し方までいささか古風で、周囲からは「変人」とのレッテルを貼られている。それでも患者思いで一止の前向きな姿勢は皆から好かれている。
忙しいながらも充実した日々を送っている一止に、母校の医局から誘いの声がかかる。医局へ行けば先端医療を学ぶことができるが、抱えている患者のことを考えると後ろ髪を引かれる。そこへ重度の胆のうがんで大学病院で手術不能といわれた「安曇さん」という女性がやってくる。安曇さんは、余命の半年を一止のもとで過ごしたいという。
一止は願いを受け入れ、看護師たちから最後に安曇さんの好きな山を見せてあげたいと聞かされ屋上に出る許可を与え、最後に食べたいという文明堂のカステラを誕生日にプレゼントする。その甲斐あって、安曇さんは穏やかな死を迎えることができた。やはり、自分はこうして死を前にしている患者のために働く医者であることを自覚するのだった。
【読みどころ】地方病院の奮闘ぶりを伝えてくれるこのシリーズは、現在5作が刊行されている。 <石>
(小学館 620円+税)