「ぜにざむらい」吉川永青著
若狭国太良荘城主、岡盛俊の嫡子、7歳の源八は父が戦死したとの報を受け、若江藤右衛門に背負われて城から脱出した。だが、追っ手をかわすために藤右衛門と離ればなれになり、百姓に脇差しまで奪われて必死で小浜の港にたどり着く。
飢えに苦しむ源八に食べものを与えてくれたのは商人の久次だった。久次は「世の中は銭の力で動いとるんや。銭がねえと何もできん」と教える。源八は生き延びるために山で獣を狩ろうと考える。木の枝で弓を作り、死闘の末にイノシシを仕留めて久次に買ってもらおうとする。だが、山から引きずっていったため毛皮も肉もぐずぐずで売り物にならない――。
現代のような経済感覚を武器に、戦国時代を生き抜いた武士を描く。
(朝日新聞出版 2145円)