「猫まくら 眠り医者ぐっすり庵」泉ゆたか著
茶問屋の一人娘・藍は、両親を相次いで亡くし、心細い日々を過ごしていた。2年前、蘭学を学びに長崎に行った兄の松次郎は、音信不通。頼りにしていた女中・久は、伯母の重によって千住宿の水茶屋に嫁に出されてしまった。
そんなある日、飼い猫のねうの鳴き声に導かれ、茶畑の隅の作業小屋に足を踏みいれると、変わり果てた姿の松次郎が寝ていた。目覚めた松次郎に思いのたけを吐き出した藍は、その夜、ぐっすりと眠る。最近、満足に眠ることができなかったのだ。朝、気持ちよく目覚めた藍は、事情を知らぬ重から松次郎が長崎で何かやらかして、役人に追われているようだと教えられる。
人の眠りを診る「ぐっすり庵」を開業する松次郎と助手を務める藍を主人公に描く時代小説。
(実業之日本社 770円)