「たたかう免疫」NHKスペシャル取材班著
2020年7月に放送されたNHKスペシャル「人体VSウイルス」の書籍化。最新の情報も加筆しながら、新型コロナウイルスと免疫の攻防の実態に迫っている。
私たちの体には、感染初期に働く「自然免疫」という機能が備わっている。ウイルスなどの異物が侵入すると、「敵が来たぞ!」と伝える警報物質であるインターフェロンを大量に放出。すると、食細胞と呼ばれる強力な防衛隊がすぐさま出動し、敵を丸のみにして撃退してしまうのだ。新型コロナウイルスに感染しても無症状で済む人は、この食細胞が体の中で大活躍していると考えられる。
ところが、新型コロナウイルスは自然免疫の攻撃をすり抜けるという驚きの能力を持っている可能性が明らかになってきた。人間の細胞に感染しながら、インターフェロンが作られる量を10分の1まで抑え込んでしまうというのだ。これでは食細胞が出動してくれず、野放しとなったウイルスは大増殖することになる。
ある研究では、インターフェロンが出ない場合、たった2日で新型コロナウイルスは1万倍にも増えてしまうことも分かっている。さらに、変異によって自身の遺伝子を変化させ、インターフェロンを抑える能力を強化しているというから恐ろしい。
これでは人間に勝ち目などなさそうだが、私たちには感染後に作られる「獲得免疫」や、ワクチンという武器もあると本書。運動や入浴によって体温を上げてリンパ液や血液の流れをよくしたり、有酸素運動で骨や筋肉を動かしたときに放出される物質の力を借りるなどして、免疫力を高めておく方法も解説している。
新型コロナウイルスとの闘いのために知っておくべき情報が満載だ。
(講談社 1650円)