「宗棍」今野敏著
仲間をいじめていた乱暴者を、松村は拳で打ち負かした。それを見ていたサムレー(士族)が声をかけた。「ワン(私)に鉄拳を打ち込むことができたら、褒美をやろう」。松村は相手の腹に拳を打ち込もうとしたが、気がつくと地面に倒れていた。だが、痛くはない。その士族は有名な武士の照屋親雲上(ペーチン)だった。
松村は父とともに照屋を訪ねて弟子入りし、照屋に手(戦いの技)を学ぶ。やがて元服して宗棍と名乗るようになるが、ある日、仲間から与那原の鶴(チルー)の噂を聞いた。地頭代の娘で、手が強く、地元の男衆が誰も勝てない。地頭代は、勝った男に嫁にやってもいいと言う。
琉球空手の礎を築いた松村宗棍の生涯を描く長編小説。
(集英社 2090円)