「死人街道」ジョー・R・ランズデール著 植草昌実訳
ジョー・ランズデールの略歴に、ホラー、SF、ウエスタン、ミステリーと、幅広いジャンルで活躍、とあったことを思い出す。ランズデールはアメリカの作家だが、アメリカ探偵作家クラブの最優秀長編賞を受賞した「ボトムズ」の印象が強いので、他のジャンルに手を出してはいても、やっぱりミステリー作家でしょ、と考えていた。
ところが本書の著者紹介欄を見ると、ホラー作家協会が主催するブラム・ストーカー(周知のように、「吸血鬼ドラキュラ」の作者だ)賞を8度受賞、とある。おやおや、8度も受賞しているのか。ということは、むしろこちらが本線なのかも、という気がする。本書を読むと、さらにそのことを実感する。
5編を収録した作品集である。主人公は、牧師のジェビダイア・メーサー。ただの牧師ではない。二丁拳銃のガンマンでもある。彼は邪悪なものを滅ぼすために荒野を旅しているのである。舞台となる西部も、普通の西部ではなく、化け物たちが跋扈(ばっこ)する世界。ようするに「魔界西部劇」だ。著者紹介にウエスタンとホラーとあったことを想起する。つまり本書は著者が得意とする2つのジャンルを融合させたというわけである。
ホラーもウエスタンも、それほど好きではない読者がいるかもしれないので、付け加えておく。実はこれ、凄まじいアクション小説でもあるのだ。特に、冒頭の中編「死屍の町」がすごい。この迫力に一票を入れる!
(新紀元社 2200円)