「娘の遺体は凍っていた」文春オンライン特集班著
2021年3月下旬、ようやく雪が解け始めた北海道・旭川市内の公園で、中学2年生の女子生徒の遺体が発見された。2月13日の夕方、「今日死のうと思う」というラインメッセージを残して行方不明になっていた廣瀬爽彩さんだった。1カ月以上雪に埋もれていた遺体は凍りついていた。
それからほどなく、文春オンライン特集班に1通のメッセージが送られてきた。学校でイジメがあったようだ、真実を調べてほしい、亡くなった爽彩さんの無念を晴らしてあげたいという、支援者からのメッセージだった。
それから2カ月。取材班は爽彩さんの母親、親族、学校関係者、加害生徒などに取材を続けた結果、同じ中学の先輩や、その友人である他校の生徒らから、凄惨なイジメを受けていたことが明らかになった。
中学に入学したばかりの爽彩さんにわいせつ写真や動画を要求し、ネットで拡散。複数で取り囲んで自慰行為を強要した。爽彩さんは、高い土手を下りて川に飛び込むという事件も起こした。「死ぬ気もねぇのに死ぬとか言うなよ」というイジメグループの言葉に追い詰められての出来事だった。
笑顔をなくして怯える娘を心配した母親は、担任教師にイジメがあるのではないかと何度か相談したが、取り合ってもらえない。耐えきれずに爽彩さんは転校したが、笑顔は戻らなかった。
誰が14歳の中学生を死に追いやったのか。学校側はイジメの存在を認めようとしない。母親同席で取材に応じた加害生徒は、イジメではなくノリでやったと反省の色がみじんもない。
保護者説明会は荒れに荒れた。切実な質問を投げかける親たちに、学校側はなにも答えない。隠蔽体質と事なかれ主義だけが透けて見える。文春オンラインの報道によって事件は社会に広く知られるところとなり、第三者委員会による再調査が決まった。
同じような悲劇を起こさないために、今後の調査の行方を注視する必要がある。
(文藝春秋 1540円)