「すばらしい人体」山本健人著

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 およそ180年ほど前、世界で初めての実用的な写真撮影法、ダゲレオタイプが発明された。

 それ以前の写真術に比べて画期的なものだったが、それでも露光に5~10分もかかり、撮影される人はその間、じっと動かずに我慢していなければならなかった。

 最近でこそ光学式手ぶれ補正などで視野のぶれにもある程度対応できるようになったが、カメラと同じ仕組みを持つ人間の目は、本を前にして頭を左右に振っても文字が読むことができる。カメラと比べると性能の違いは一目瞭然。

 本書は、外科医の著者が、我々人間の体はいかにすばらしい機能を持っているかを人体各部にわたって解説してくれる。

 たとえば、心臓は1分間におよそ70~80回拍動する。1日約8万回、80年では約20億回! 肺から酸素を含んだ血液を受け取った心臓は毎分5リットルもの血液を全身に送り出し、各臓器はその酸素を消費し、不要な二酸化炭素を血液に排泄(はいせつ)する。それがまた心臓に戻ってきて肺に送り出し、そこで再び酸素を受け取る。この精妙な循環を20億回も休みなく続ける心臓のなんと強靱なことか。

 心臓に比べると地味(?)な存在である肛門もすごい。肛門は直腸から下りてきたものが固体か液体か気体かを瞬時に見分け、気体のときのみ排出する。これがおならだ。固体と気体が同時に下りてきたときは、固体を直腸内にとどめて気体のみを出す。下痢のときなどこの調整がうまくいかず、大変なことになるのだが──。

 本書にはそうした人体の不思議とともに、病気と医学の知見も詳しく書かれている。現在大きな問題となっている感染症の問題や進化する医療機器の話など、医療にまつわるトリビアな話題も興味深い。手術室の医師たちの服やマスクなどすべて青色系統になっているのは、手術中は血液を見ることが多く、もしそれらが白だと視線を移したときに青緑の残像がちらつく。それを防ぐため赤の補色にして、併せて目の疲れも軽減させるのだという。コロナ禍の現在、自分の体と医療のことを知るのは大事だ。 <狸>

(ダイヤモンド社 1870円)

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