吉川永青(作家)
1月X日 4月予定の文庫のために改稿作業中。単行本執筆は何年も前で、当時の記憶だけでは間違うこともあるかと「別冊歴史読本 豊臣秀吉合戦総覧」(新人物往来社 1870円)を見返した。秀吉の合戦だけに特化して詳述された本で、戦国もの、特に秀吉の絡む話を書くときには重宝する。
1月X日 録画しておいたNHK大河ドラマを視聴。今年は源平もの、平安末期から鎌倉初期が舞台である。そう言えば、と思い出して「鎌倉燃ゆ 歴史小説傑作選」(PHP研究所 990円)を手に取った。
鎌倉幕府草創に関わった重要人物の短編アンソロジーだ。私も1編を寄稿させていただいたが、刊行時に送っていただいた見本を「積ん読」にしてしまっていた。自分の書いたものは読む必要なし、だが他の方々の作品はぜひ読んでおきたいとページを繰る。執筆陣の着眼点、人物の心理や解釈には新鮮な驚きがあった。同じ人物が登場するからと言って、物語まで同じになる訳ではない。執筆する作家ごとに切り口の違いがあり、それによって、ひとりの人物も千変万化するからだ。こういうところを読むのも歴史ものの醍醐味と言えよう。
これは映像作品でも同じである。大河ドラマも現段階ではコミカルな表現を多用しているが、北条得宗家が鎌倉幕府の実権を握る過程には極めてドロドロした人間模様がある訳で、ここをどう見せてくれるのだろうかと、先々に期待している。
1月X日 私が某社で隔月連載中の「ポンコツ列伝」のために祖田浩一編「江戸奇人稀才事典」(東京堂出版 2030円)と中江克己著「大江戸〈奇人変人〉かわら版」(新潮社 476円)を読み、元ネタとなる人物を物色。仕事のための読書だが、ただ読むだけでも楽しい。ちなみに、この2冊から発見した中に、ものの考え方が私とかなり近い人物がいた。薄々自覚していたが、やはり私も偏屈・変人の類だったようである。嗚呼、世に変人の種は尽きまじ。