「ボタニカ」 朝井まかて著
植物学研究者の牧野富太郎は文久2(1862)年、造り酒屋に生まれ、「岸屋の坊(ぼん)」と呼ばれていた。両親はなく、祖母に育てられた。道端の植物に勝手に名前をつけて遊ぶのが好きな子どもだった。
村の私学の名教義塾で学んだが、明治7年に閉校となった後、「学制」によってつくられた小学校に通う。名教義塾に比べるとレベルが低く、うんざりした。だが、教師が鮮やかに彩色した「博物図」を柱に掛けたとたん、富太郎は前に飛び出した。植物の葉の形が分類され、英語名も記されている。英語名があるということは、イギリスにもあるということか。
独学で植物学の研究者になった天才の生涯を描く長編小説。
(祥伝社 1980円)