「奈良で学ぶ寺院建築入門」海野聡著
奈良時代、平城京に造られた多くの寺院は権力者の権威を内外に示すサインであり、寺院建築にはその権威や格式を示すデザインコードや仕掛けが込められているという。屋根や葺(ふ)き材、天井、柱の形など、それぞれの持つ意味を知ることが寺院建築を深く読み解くカギとなる。各時代の建築が残る奈良の寺を巡り、古建築の鑑賞の基本を伝授してくれるガイドブック。
まずは唐から渡日した鑑真のついのすみかとなった唐招提寺へ。同寺の金堂と講堂を見比べると前者には中国風の印象を、後者にはなじみ深い日本的な要素を感じる。その印象の違いに作用する屋根形状の違いについて解説。
ほかに薬師寺など4つの寺院を巡り、建築の基礎知識やそれぞれの造られ方、職人たちの思いや歴史的背景を読み解く。
(集英社 1100円)