「見つける東京」岡部敬史文 山出高士写真
緊急事態宣言下の東京で、遠出もままならず、運動不足対策に散歩を始め、わが町の知られざる魅力に改めて気づいたという人も多い。
本書は、そんなふうに誰もが見過ごしてきた東京の魅力を教えてくれるビジュアルガイド。単に名所や名店を並べて案内するのではなく、東京をより楽しむため、そして、よりよく知るための「視点」を授けてくれる新趣向のガイドブックだ。
例えば、東京には日本の近代建築を代表する建築家・伊東忠太(1867~1954年)の代表作がいくつか残っている。
そのひとつが中央区の「築地本願寺」。古代インド仏教様式のその建物は、アジア各国に留学し、独特な感性を磨いてきた伊東ならではのオリエンタルな魅力にあふれている。
もうひとつの墨田区「東京都慰霊堂」には、関東大震災の被災者に加え、東京大空襲の被害者の遺骨が納められている。
伊東の建築の面白さは、随所に「妖怪キャラクター」が配されているところ。この2つの建物でも思わぬところに隠された妖怪探しが楽しめる。
同時にたくさんの電車を見ることができる「トレインビュースポット」として、北区の施設「北とぴあ」の展望ロビーと御茶ノ水の「聖橋」(表紙)を取り上げる。聖橋からJR中央線と総武線、地下鉄丸ノ内線の電車が通過する貴重な「3線交差」の瞬間を目撃できたら幸運なのだとか。
他にも、都内の各所にある「すずらん通り」の由来。表参道の交差点にある灯籠や隅田川に架かる言問橋の石柱に残る空襲の痕跡。銀座の「bar kamo」と調布市の老舗居酒屋「一心」で飲み比べる「ホッピー」。渋谷だけじゃない、都内各所にある「モヤイ像」など。44の視点で東京のちょっと変わった楽しみ方を教えてくれる。
(東京書籍 1430円)