「クリムゾン・リバー」 ジャン=クリストフ・グランジェ著 平岡敦訳
フランス産のミステリーというと、心理描写に長け、錯綜とした思索をめぐらすといった雰囲気が強かったが、英米ミステリー流のサイコスリラーとハリウッド映画のような派手なアクションを持ち込んで、旧来のイメージを覆したのが本書。一躍大ベストセラーとなった後、ジャン・レノとバンサン・カッセル主演で映画化され、公開2カ月足らずで300万人もの観客動員を記録する異例の大ヒットとなった。
【あらすじ】ピエール・ニエマンス警視正は、司法警察組織犯罪対策班の元花形刑事。しかし激高すると見境なしに暴力を振るってしまうことから、殺人捜査の第一線から外されていた。今回もまたイギリス人フーリガンを叩きのめしてしまい、このままでは問題になると思った上司は、ニエマンスをゲルノンという小さな大学町で起きた事件の捜査に送り込む。
被害者は大学の図書館司書で、岸壁の割れ目に胎児の格好で押し込まれ、体中に拷問の痕があり、しかも両目をえぐられていた。ほぼ同じ頃、ゲルノンから300キロ離れた町サルザックでは、小学校での盗難と墓荒らしが起きていた。捜査に当たるのは孤児院育ちのアラブ人2世のカリム・アブドゥフ警部。優秀な刑事だが上層部に逆らったため田舎町に左遷されていた。
この一見無関係な2つの町で起きた事件だが、事件を追っていくうちにひとつにつながっていく。そのカギになるのが「我らは緋色の川(クリムゾン・リバー)を制す」という謎の言葉だった--。
【読みどころ】タイプはまったく違うがともに破天荒な2人の刑事が、事件解決に尋常でない執念をもって突き進んでいく姿は、まさにハリウッド映画を彷彿とさせる。本書を読んだ後に映画(DVD)を見ると、面白さ倍増。 <石>
(東京創元社1650円)