「緋の河」桜木紫乃著
昭和23年の大みそか、家族とともに雪が降り始めた釧路の街を初詣に向かう秀男は、途中で出会った花街の女が放つ香りが忘れられない。女の子と間違えられるほど美しい顔をしている秀男は、近所の子らとの遊びには加わらず、いつも2歳年上の姉・章子と過ごしている。小学生になり、女のような言葉遣いや小さな体を理由に同級生から「なりかけ」と呼ばれ、いじめを受ける秀男を守ってくれたのは、同級生の文次だった。やがて秀男は文次に恋心を抱き始める。しかし、中学校入学を目前にして、文次は相撲部屋にスカウトされ東京に行ってしまう。
「神様が、仕上げを間違った」体を武器に夜の街を渡り歩き、やがて芸能界へと上り詰めるカルーセル麻紀をモデルに描く長編小説。
(新潮社 1045円)