「二度のお別れ」黒川博行著
警察もののジャンルのひとつに「バディーもの」がある。テレビドラマでも「相棒」「あぶない刑事」「噂の刑事トミーとマツ」といったバディーものの人気ドラマが作られている。黒川博行のデビュー作であり、黒マメコンビによる〈大阪府警〉シリーズの第1作となる本書もそのひとつ。
【あらすじ】黒田は大阪府警捜査1課第6係の刑事。30代で結婚して5歳の娘がいるが、連日の過酷な勤務でしばらく会えないでいる。羽曳野で発生したガソリンスタンド強盗事件が一段落し、久しぶりに家で遅い夕食にようやくありつこうとした矢先、上司から電話が入る。新大阪駅の北にある三協銀行新大阪支店に強盗が侵入し、約400万円を強奪。居合わせた男の客を拳銃で撃ち、そのまま人質として連れ去ったという。人質の垣沼は近くの鉄工所の経営者で、融資依頼に来ていて事件に遭遇、犯人に飛びかかったところを撃たれたのだ。
現場で同僚のマメちゃんこと亀田淳也刑事と合流。色黒で童顔、コロコロした体形から「マメダ」と呼ばれ、陽気で機関銃のようにしゃべりまくる。犯人の行方が分からないまま、今度は垣沼の切断された小指が垣沼の妻に送られてきて、1億円の身代金を要求される。
黒田とマメちゃんは、事件には何らかの裏があると見立てて独自の捜査を進めていくが、その動きをあざ笑うかのように犯人はことごとく警察の捜査の網をくぐり抜けていく──。
【読みどころ】この作品は、カタカナの手紙による脅迫状など、本書刊行の前後に起きたグリコ・森永事件との類似から話題にもなったことは有名。著者には、大阪府警今里署のマル暴担当刑事・堀内と伊達が活躍する〈堀内・伊達〉シリーズがあるが、こちらも秀逸なバディーもの。<石>
(KADOKAWA 572円)