「らんぼう新装版」大沢在昌著
15~16年ほど前、2時間ドラマ枠で、坂口憲二、哀川翔の主演でテレビドラマ化されたのを覚えている人も多いだろう。バディーものの中でも破格の破天荒ぶりが満開。日本の警察小説の枠から大きく飛び出した、大沢在昌が満を持して放ったユーモアあふれる警察小説。
【あらすじ】身長185センチ、体重100キロの巨漢で、高校時代は柔道でインターハイに出場する直前までいった(予選前の喧嘩沙汰で出場停止)、通称「ウラ」こと大浦。ウラとコンビを組むのは、身長はウラより20センチ低いが、空手の達人で、アロハシャツを常用する「イケ」こと赤池。このふたりの所轄刑事はどちらもやたらと喧嘩っ早く、相手が誰であろうと怒るとすぐに手を出すので、ヤクザはもちろん、署内からも「史上最悪のコンビ」「最も凶暴なコンビ」として恐れられている。
コンビニの駐車場にたむろしている「族」連中が捜査の邪魔だと思えば、有無を言わさずぼこぼこにし、公園で張り込みをしているふたりに因縁をつけてきたサングラスの外国人には、いきなり頭突きと跳び蹴りを食らわせる。地元の風俗営業者たちもこのコンビが店に現れると、特上の女性を差し出してご機嫌を取らないと、あとで酷い目に遭うと戦々恐々としている。こんなふたりだが、その豪腕によって検挙率は署内ナンバーワン。上司もこのコンビの暴力沙汰にはある程度、目をつぶっている──。
【読みどころ】なんともハチャメチャなコンビだが、収められている11の短編にはそれぞれの生い立ちに関わる物語も登場し、読んでいるうちに親しみが湧いてくる。現実ではあり得ない設定だが、このコンビが力で悪を抑え込むカタルシスは格別。すっきりしたい人にはおすすめ。 <石>
(KADOKAWA792円)