「信仰」村田沙耶香著
鈴木クミは角倉ハヤトと結婚すると、2人の65歳になったときの生存率は30%以下になると、生存率アドバイザーに告げられた。エリート銀行員のハヤトは「A」だから独身のままなら生存率は87%だが、クミは「Cマイナス」だから、独身だと20%を切るというのだ。
「A」の人たちが集まるホテルのラウンジでクミは「別れようか」と言った。行方不明のクミの父は「D」、母は「C」だった。「D」は路上生活者となり、野人化した人だけが生き残れる。ゲリラ豪雨に紛れてハヤトと抱き合いながらクミは「この雨の中が、これから私が生きていく世界なのよ」と言った。
奇妙な格差社会を描く短編とエッセー集。
(文藝春秋 1320円)