「水の月」中江有里著
テレビの制作スタッフとして働く渡辺百花のもとへ、妹の梅田千愛(ちあき)から手紙がきた。30年前に両親が離婚して、百花は父と、千愛は母と暮らしていた。テレビ番組のエンドロールで百花の名を見つけて連絡してきたのだ。母が膵臓(すいぞう)がんのステージ4で、大腸と肝臓に転移しており、もう手術はできないという。
離婚のとき、小学3年生だった百花は母の記憶は曖昧だし、3歳下の千愛も父や姉の記憶はなかった。百花は母のことを思い出すことはなくなっていたが、母ががんだと知って、自分が母が大好きだったことを思い出した。
離ればなれに育った姉妹が、手紙をやりとりして家族の物語をつむいでいく。
(潮出版社 1980円)