「正しい愛と理想の息子」寺地はるな著
寸借詐欺の常習犯の父親の背中を見て育った32歳の眞は、今は清掃会社でアルバイトをしながら、相棒の沖とイミテーションの宝石を売り歩く。2人が働いていた違法カジノの経営者・灰嶋に200万円の借金を返さなければならないからだ。イケメンの沖が女をその気にさせて、眞が婚約指輪を売りつけるという手口でようやく200万円が貯まった。
しかし、最後にカモにした女がだまされたふりをしていたことに気づかず、すべての金を奪われてしまう。灰嶋に返済を催促された眞は、一獲千金を狙って独り暮らしの老人をだまそうと計画。その矢先、沖がもう何年も会っていない自分の母親を相手にオレオレ詐欺をしようと言い出す。
「水を縫う」などの話題作を連発する著者が描く異色の家族小説。
(光文社 704円)